シルクが人の肌にやさしい訳

シルクが人の肌にやさしい訳

シルクは表面が滑らかで、肌ざわりがとっても気持ちのいい素材です。高級なイメージが前面に出がちですが、実は私たちの日常生活に寄り添ってくれるような面を結構持ち合わせているんです。

そのため、シルクは「人の肌にやさしい」とも言われているのですが、具体的には、どういう事なのか見ていきたいと思います。
 

シルクは人の肌に似ている?

シルクが人の肌にやさしい訳|SUBE

 

まず、シルクが「人の肌にやさしい」というのは、肌にとって負担が少ないためなのです。

負担が少ない理由の一つは、シルクが人の肌に似ているという事があります。

人の体を構成するタンパク質は、20種類のアミノ酸で構成されています。

そしてシルクの繊維「フィブロイン」を構成するアミノ酸は主に、「グリシン」「アラニン」「セリン」「チロシン」。これは人の肌のコラーゲンと組成が似ているのです。

だから肌とは異なる成分からできた他の繊維に比べると、肌への刺激が少なく、お肌にやさしいと言われます。

シルクは着用した時に、肌に触れていないような、何も着ていないような不思議な感覚があるのですが、これも人の肌に似ているからかもしれません。

 

なぜ夏は涼しく冬は暖かいのか?

シルクが人の肌にやさしい訳|SUBE

そして、肌にとって負担が少ない理由がもう一つ。それは「肌を快適な状態に保ってくれる」から。

その結果、シルクは夏涼しく冬暖かいという訳なのですが、ではなぜ肌を快適な状態に保てるのか?

まず、お蚕さんから出た繭糸は、「フィブロイン」というタンパク質の繊維2本が、「セリシン」というタンパク質に覆われている状態です。この状態ではまだ光沢がありません。

それを「精練」という「セリシン」を取り除く工程を経て、ようやく私たちの知っている光沢あるシルクとなります。

で、その残った「フィブロイン」というのは、フィブリルという更に極細の繊維がたくさん集まって束になったものです。

その繊維間には隙間がたくさんあるため、そこに空気を含みます。空気は熱伝導率が低いので外気を遮断し、温度を快適に保つのです。寒い地域に多い二重窓みたいな感じでしょうか。

夏は暑い外気を、冬は冷たい外気を遮断してくれるわけです。

そしてさらに、シルクの吸湿性・放湿性はコットンの約1.5倍あるのだそう。

夏は汗をかき蒸発する時の気化熱で体温を下げ、その蒸気をシルクが素早く吸湿し空気中へ放湿することで、蒸れにくくサラッとして、なお涼しいというわけです。

冒険家の植村直己さんも、南極生活ではシルクを防寒装備として選んでいたそうです。極地では肌着の素材によって、生死を左右するほど重要なものなので、シルクの凄さを改めて実感します。

登山でも吸湿性の高いシルクやウール、ポリエステルのインナーが推奨されていて、私自身もこの効果はとても実感しています。


 

紫外線から肌を守る

シルクが人の肌にやさしい訳|SUBE

 

あと、シルクは紫外線を防ぐと言われますが、これはどうでしょうか。

まず元となる繭は、お蚕さんが幼虫から蛹(さなぎ)になる時に、身を守るためにつくるシェルターです。だから、中のお蚕さんを守るため、有害な紫外線をカットしてくれるというスゴイ機能が備わっているんですね。

夏の素材、コットンやリネンよりもカット率が高く優れていると言われます。

ただし、シルクが紫外線を吸収することで、肌への透過を防止しているため、紫外線を吸収したシルクは黄色く変色してしまいます…。シルクが紫外線を跳ね返しているわけではないのです。

なので、お洗濯で干すときはくれぐれも日陰で。
 

お蚕さんの温もり

シルクって合成繊維には真似することのできない、とても不思議な魅力を持った素材なのですが、忘れたくないのは、シルクが命あるものからできているという事です。

お蚕さんが身にまとってきた温もりに、感謝しながら大切に作り着ていきたいと思います。

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