シルクも使っているうちに、だんだんと風合いが変化していきます。このエイジング(経年変化)について捉え方は人それぞれかもしれません。
「劣化してしまった」もしくは、「味わいが増した」。使い込むことで味わいが増していくのであれば、その変化が愉しみに変わりませんか?
モノはすべて経年変化するもの
シルクに限らずですが、どんなモノでも使い込んでいくと風合いは変化していきます。
でもそこには「味わい」とその変化の過程を「愉しむ時間」が存在しているんです。
無垢材の床や家具は、新品のとき生まれたての赤ちゃんのような木肌ですが、何十年と使い込んでいくと、色味も変わり自然とツヤがでてきて、キズやシミも味わいに変わります。
鉄のフライパンも初めはツルっとツヤのある灰色だったのが、黒くゴツッとした重厚感ある風貌へと変化。
何度も火にかけ焼き込まれた表面には油が染み込み、焦げ付きにくいフライパンへと変わります。
他にも陶器の器、レザー、デニム…。デニムなんて作る過程でわざわざエイジングさせるほどですが。自分が本当に良いと思ったモノをメンテナンスし、壊れたらリペアする。
そんな風に、モノを長く大切に使っている人もまた素敵に見えます。
シルクのエイジング
まだ20代だった頃、勤めていたアパレルメーカーでシルクのエイジングの面白さを教えてくれた上司がいました。
水洗いで風合いを変化させたシルクの話を聞いたんです。表面はフィブリル化を起こし、くたっと肌に吸いつくような柔らかい風合いになり、シワにも味わいがでる。
いままで、シルクはこんな風合いにしてはいけないものだと勝手に思い込んでいたので、この時シルクに対しての縛りが無くなり、可能性を思いっきり感じた瞬間でした。
そんな話を聞いて、しばらく毎日一生懸命シルクを洗っていたことがありました。
自分だけのシルク
新品のシルクは洗うのが怖いほど綺麗なので、初めて洗ってシワが入ったときは「ガーン…」ってなりますよね。
でもいいんです。ここからだんだんと自分の肌に馴染む風合いに変化していくので。その過程をゆったりと愉しみましょう。
例えば、サテンの生地は洗うにつれシワが重なり、くたっと柔らかくホッと落ち着く着心地に変化していきます。
ツイルの生地は元々サテンよりハリ感のある風合いですので、はじめの頃は洗うにつれゴワっとしたハリのある風合いに感じるかもしれません。
でも、しばらく洗いをくり返していると、今度は徐々にくたっと柔らかく落ち着き、自分の肌になじむ風合いへと変化していきます。コットンのオックスフォードシャツのような変化にも似ているかもしれません。
経年変化しないものを作ることは残念ながら不可能で、必ずいつかは寿命がきます。
でもその変化が、「劣化した」ではなく「味わいが増した」だと、ちょっと暮らしが愉しくならないでしょうか?
そういう風にモノと接していると、使い捨ても減らせたり、環境にも貢献できそう。過ごす時間もなんだか素敵になりそうです。