シルクといえば「高級素材」とか「光沢があって上品」というイメージが強いでしょうか?あと、「お洗濯が難しい」だったり「肌ざわりが良い」というイメージもありますね。
シルクを暮らしに役立てるために、メリットとデメリットをご紹介したいと思います。
シルクとは
蚕(カイコ)という昆虫が、幼虫から蛹(さなぎ)になる際に口から「繭糸」を出し、外敵から身を守る「繭」という隠れ家を作ります。それが「絹糸」の原料です。
お蚕さんの体内で作られた繊維の元となる「フィブロイン」は、「セリシン」という糊のようなものに覆われ、2本のフィブロインが合体して口から出されます。それが「繭糸」です。
繭は1本の繭糸から出来ていて長さは約1500m。天然繊維で唯一のフィラメント繊維なのです。
そして極細の「繭糸」を何本か束ねて「生糸」にし、その「生糸」を何本か撚り合わせて「絹糸」になります。
この「絹糸」から「セリシン」や不純物を取り除く「精練」という工程を経て、ようやく私たちが知っている柔らかく光沢ある風合いが生まれるのです。
この精練の加減によって製品の質が左右され、精練し過ぎると「フィブロイン」を傷つけてしまい、精練が弱くセリシンが多く残ると光沢が出ない糸になります。とても重要な工程です。
人の肌に似た繊維
シルクは「肌にやさしい」と言われますが、それはシルクが肌にとって負担が少ないため。
肌にとって負担が少ない理由の一つは、シルクが人の肌に似ているからです。
人の体を構成するタンパク質は、20種類のアミノ酸で構成されています。
そしてシルクの「フィブロイン」を構成するアミノ酸は主に、「グリシン」「アラニン」「セリン」「チロシン」。これは人の肌のコラーゲンと組成が似ているのです。
だから肌と異なる成分からできた他の繊維に比べると、肌への刺激が少なく、お肌にやさしいと言われます。
シルクは着用した時に、何も着ていないような不思議な感覚があるのですが、これも人の肌に似ているからかもしれませんね。
シルクは夏涼しく冬暖かいのか?
そして、肌にとって負担が少ない理由がもう一つ。それは「肌を快適な状態に保ってくれる」から。
その結果、シルクは夏涼しく冬暖かいという訳なのですが、ではなぜ肌を快適な状態に保てるのか?
それは、シルクの構造のおかげです。シルク繊維「フィブロイン」は「フィブリル」という更に極細の繊維がたくさん集まって束になったもの。
その繊維間には隙間がたくさんあるため、そこに空気を含みます。空気は熱伝導率が低いので外気を遮断し、温度を快適に保つのです。寒い地域に多い二重窓みたいな感じでしょうか。
夏は暑い外気を、冬は冷たい外気を遮断してくれるわけです。
そして、シルクの吸湿性・放湿性はコットンの約1.5倍あるのだそう。
夏は汗をかき蒸発する時の気化熱で体温を下げ、その蒸気をシルクが素早く吸湿し空気中へ放湿することで、蒸れにくくサラッとして、なお涼しいというわけです。
紫外線から肌を守る
あと、シルクは紫外線を防ぐと言われますが、これはどうでしょうか。
まず元となる繭は、お蚕さんが幼虫から蛹(さなぎ)になる時に、身を守るためにつくるシェルターです。だから、中のお蚕さんを守るため、有害な紫外線をカットしてくれるというスゴイ機能が備わっているんですね。
夏の素材、コットンやリネンよりもカット率が高く優れていると言われます。
ただ、シルクが紫外線を吸収することで、肌への透過を防止しているわけなので、紫外線を吸収したシルクは黄色く変色してしまいます…。シルクが紫外線を跳ね返しているわけではないのです。
なので、お洗濯で干す時はくれぐれも日陰で。
日常使いに最適なシルク
「高級」でなんとなく「特別な日のお洋服」というイメージが強いシルクですが、こうして見ると、けっこう人の暮らしに寄り添った日常使いに適した素材なんです。
これから、もっとシルクが暮らしに役立つ使われ方になってくるといいなって思っています。
シルクの弱点
ただ、シルクも良いとこだけではありません。弱点もあります。
・水洗いで縮む
・摩擦に弱く毛羽立ちやすい(特に濃色は白っぽくなる)
・汗や雨でシミになりやすい
・日光で黄変しやすい
・虫に食われやすい
・変色しやすい
・シワになりやすい
・引っ掛けやすい
・縫い目滑脱しやすい(縫い目に力がかかると開く現象)
「取り扱いが難しい」と言われるのも、これらが原因で、シルクの洗濯が基本「クリーニング」か「手洗い」なのもその為です。
手洗いが大変で使うことを諦めるようなことなく、使いたい人がみんな使えるように、SUBEでは、洗濯機で洗っても「白化しにくい」「縮みにくい」シルクだけを使用しています。
お蚕さんの温もり
シルクって合成繊維には真似することのできない、とても不思議な魅力を持った素材なのですが、忘れたくないのは、シルクが命あるものからできているという事です。
お蚕さんが身にまとってきた温もりに、感謝しながら大切に作り着ていきたいと思います。